Special Contents 「好き」を仕事にするということ
様々な業界の「好き」を仕事に下先輩のインタビュー
vol.07 CHEF PÂTISSIER 石川康 Ishikawa Yasushi
「好きなこと」を仕事にできる人はそう多くないかもしれせん。楽しそうという気持ちだけで仕事はできるの?…と「好き」だからこそ不安が募るのも事実。ここでは「好き」を仕事にしている人生の先輩に、「仕事」について伺います。 第7回は、パティシエの石川康シェフです。

PROFILE
石川康 Ishikawa Yasushi
新潟県生まれ。和菓子職人の家に生まれ、人生を大きく変えた洋菓子との出会いを経て、修行をするために単身渡欧。フランス・パリ、スイス・チューリッヒなどでの数年間にわたる修行や様々な経験を経て、現在は大手ホテルでシニアマネージャーとして勤務。

- パティシエという職業は、美容師と似ているところが沢山あるように思います。人に幸せを提供するということ、大きな店舗から個人店、そして独立など働く環境の選択の幅、下積みや経験がとても大切だという点……。今回お話を伺うのはパティシエとして30年以上のキャリアを持ち、現役で走り続ける石川康シェフ。そのスタートはどんなものだったのでしょう?
- 石川シェフ:僕、音楽が好きで本当はオーディオ関係の仕事に就きたかったんだよね。でも、家が和菓子屋だったこともあり、新潟の和菓子店で修業を始めたんだ。入社8ヶ月で急に社長から「石川君、ケーキを作りなさい」と指令が。だからケーキを作るはめになったんだけど……いかんせん何の経験もなくて、本を見ながらだけじゃ上手く作れなくて困り果てていたところに、当時東京帰りの職人さんから「石川君も東京行って修業したほうがいいよ」とアドバイスをもらって。その時に初めて東京で洋菓子の修業しようと思ったんだ。21歳から22歳になる春のことだよ。
- どのように東京での修行がスタートしたのですか?
- 石川シェフ:自分の意志でやろうと決めたのだから、知り合いに頼らず自分の力で職場を探そうと、製菓雑誌の裏に書いてあった洋菓子協会に直接電話したよ。当時東京に私鉄があることも知らなかった僕は事務所のおばさんに書いてもらった地図を片手に迷いながらも、3件面接したんだけれど、自分が望むようなお店じゃなくて、結局断わったんだ。2回目の上京で田園調布の「レピドール」というお店で面接し、そこの社長から「君は何か外国語を喋れのか」と聞かれ、洋菓子を作るのにはフランス語が必要で、それならばフランスに行かなくちゃいけないんだと思ったよ。だからフランスに行くことを目標に、まずは「レピドール」にて修行をスタートさせたんだ。

いつか自分のお店を持つことを夢見て、修行の合間に沢山のカフェも巡った。

パリ修行時代、飴細工教室の先生と。- 最初から“こういうのがつくりたい”というイメージはしっかりあったんですね。そこから今のキャリアが本格的にスタートしたんですね。その後は?
- 石川シェフ:全てが新鮮でとても面白かったよ。早朝から遅くまで体力的にキツかったけれど、精神的には充実した毎日だったなァ。でも、そこで使っているレシピがフランス語で、全然わからなくて悔しい思いもして。ますます、本場で学びたいと思い、1年3ヶ月必死でフランス語をマスターし、フランス行きの準備を整えたんだ。それが26歳の時だよ。
- そんな短い間にフランス語を?! 本気ですね。いよいよ、ケーキの本場、憧れのフランスですね!
- 石川シェフ:ところが、あてにしてたパリのお店がダメになり、スイスのチューリッヒに行くことに。今度はドイツ語を猛勉強してスイスへ修行に行ったんだ。そこで、見たもの、聞いたもの、学んだことは今でも自分の基礎になってるよ。3年修行して、家庭の事情で一旦帰国したものの、30歳の頃にどうしてもやっぱりフランスに行きたくて、今度こそフランスへ。日本食屋でアルバイトしながらケーキ屋で修行するのは大変だったけれど、憶えたいことが沢山で本当にワクワクした毎日だった。
- 修行を終えてからは、東京や横浜の大手ホテルで厨房に立ったんですね。その後、地元新潟に戻り自分のお店を開店。今はまた新潟のホテルにて働いていますが、どんな気持ちで走り続けているのですか?
- 石川シェフ:いつでも「次はこんなことをしたい」って思って働いているかな。今は、マネージャーという立場になり、現場を離れてしまったんだ。でも、やっぱり厨房に立って「美味しくて綺麗なケーキを作りたい」そう思って、また新しい自分のお店を作ろうと、準備をしているところ。簡単なことではないし、いろんなことを言う人もいるけれど、「自分がこうしたいこうなりたい」という信念がブレなければ、成功しても失敗しても次に進めると思うんだよね。自分を信じて進むのみ! おじいちゃんになっても夢は追い続けるよ。

「Chartres95」というお店を営んでいた時代に作った
クグロフ型のケーキ〈ビスキームー〉。



